研究概要 |
研究は大きく2つに分けられる.(1)第一イオン化しきい値以上の電子状態を正確に求めることと,(2)その様な電子状態のもとで原子分子の動的過程である. :研究(1):水素分子イオンによる電子の散乱をcomplex Kohnの変分法で解く.2中心ポテンシャルと電子相関を正確に記述するため,楕円座標Hylleraas型基底関数の導入を柱に計算プログラムの開発を進めている. 研究(2):1996年度の具体的な成果として,動的過程におけるoff-the-energy-shellからの寄与の記述法を開発し,この効果が重要であることを明らかにした.励起状態における動的過程では,複数の電子状態とその各々の平均場中での原子核の運動を考える.こうした状態は相互作用により混じり遷移を起こすわけであるが,同時に状態がゆがみ上記の状態以外の成分(=off-the-energy-shell)が混じる.このゆがみを量子欠損理論に基づきチャンネルが閉じた解離状態として記述し,H_2^+の解離性励起や解離性再結合の解離生成物の電子状態分布を数値計算することにより,その重要性を示した.またHeH分子系では電子配置関相互作用に匹敵する強度の非断熱相互作用があり解離性再結合も大きな断面積をもつが,閉じた解離チャンネルを考えることにより量子欠損理論でこのことが説明できることを示した.
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