軟X線顕微鏡は、主として生体系の分子を水を含んだままで観測が可能であると云うことで、注目を集めている。この方法は分子中の炭素、窒素原子の光電離過程を利用しで映像の影を作るものであるが、光励起現象の過程を利用すると、分子の場合でも吸収断面積が数倍から1桁大きい。この光励起の過程を利用しての軟X線顕微鏡の結像の可能性を理論的に調べるのが本研究の目的である。この研究は平成7年度から始められ平成9年度をもって終了した。 (1)C1sから2π*軌道への遷移による内殻励起によってX線の映像が得られることが理論的にも確かめられた。これはXANESのX線波長による映像変化として行われた実験の理論的な基礎づけを与える。 (2)紫外光一可視光2重共鳴吸収の理論解析と実験を行った。てトリプトファン分子に関して行い、理論的予測を裏付ける結果を得た。 (3)視外光をポンプ光として軟X線をプローブ光とした前項と同様の理論解析を行った。トリプトファンについての具体的な計算を行った。市販のレーザーを用いて十分に映像が得られることが解った。 (4)紫外光一軟X線の2重共鳴吸収についての検証実験が池滝、柳下により行われたが、これについての準備段階での理論的な解析を行った。NO分子についての実験結果の解析を行った。これによると406-411eVの吸収スペクトルの同定をおこなった。 (5)クラマ-ス-クロニッヒの関係をもちいて測定された軟X線の吸収断面積とハートレー-スレータの計算コードによる計算から281-310eVのエネルギー領域での光学定数の実部を求めた。このデータはこのエネルギー領域での多層膜光学素子の設計の役立つであろう。
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