研究概要 |
北上山地地域は太平洋プレート・北米(ユーラシア)プレート境界に最も近い陸上の地域であり,プレート境界での力学的相互作用と内陸の応力場との関係を知る上で重要な地域である.本研究は,この地域の地殼活動の特徴と応力場との関係を明らかにするとともに,内陸部の応力源に関する検討を行うことを目的に,岩手県釜石,普代,遠野,青森県階上で深さ500mまでの地殼応力を,変形率変化法(DRA)を用いて測定した.得られた結果は以下の通りである. 1。北上山地の東(沿岸)部は南-北,あるいは南西-北東に卓越した張力場[水平方向の平均応力が鉛直応力より小さい場]にある.2。水平方向の相対差応力[水平方向の差応力/鉛直応力]は北東部(階上,普代)で小さく,南東部(釜石,遠野)で大きい.3。北東部では鉛直応力が水平最大応力よりもやや大きく,南東部ではほぼ等しい.4。相対剪断応力r[=最大せん断応力/最大せん断面に対する法線応力]は階上周辺を除いて特に小さくはないが,地域差は小さい.さらに,深さ100mでの地殼応力ではあるが,既測定に岩手県江刺の地殼応力と合わせ考えると,次のことが示唆される.5。北上山地西部(内陸部)では水平方向の最大応力が鉛直応力よりも大きい. 1883〜1985年の地殼水平歪(国土地理院)はこの地域が南-北,あるいは南西-北東の伸張場であることを特徴付けているが,(1。)の結果はこれと調和的である.また,この地域の不活発な地震活動は(4。)と関係しているものと思われる.さらに,以上の結果は,内陸の応力場の形成が太平洋プレートとの力学的相互作用の直接的な結果ではない可能性を示唆している.
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