研究概要 |
わが国の全国的な地震調査事業は,明治17年末に,内務省地理局東京気象台(後の中央気象台)によって始められた.当初は主として測候所や郡役所からの有感報告に基づいて,震度分布図を作り,震源地を推定していたが.残念ながら当時の膨大な原報告やそれをとりまとめた地震調査原簿の大部分は,震災等で焼失したりして残っていない.しかし,1885-92の8年間については,ミルン(Milne,1895)が調査原簿を要約して,すべての地震(8331個)を含むカタログ(第1カタログと第2カタログからなる)を作っているので,それを手掛かりに全国的な小地震をふくむ地震活動の推移をある程度明らかにできる可能性がある.今回は、この2つのカタログのデータをパソコンで扱えるようファイル化したのち、ひとつのデータベースにとりまとめた.さらにこれと気象庁に残存している原資料類(最近マイクロフィルム化されている)と照合し,このカタログの震源推定の精度等を再検討した.第1カタログに与えられている震源地が比較的正しいと考えられる中部地方以西についてこのカタログによる震央分布図や地域別の各種の時系列図をSEIS-PCを用いて作成した.濃尾地震前の震源地周辺の高い活動度や,地震後,震源域の延長にあたる福井県のほかに,やや離れた京都付近でも地震活動が活発化したようにみえることなど,興味深い結果が得られた.しかし,報告点の増減などの状況変化が著しく影響している場合もあり,事実の有意性についてはさらに原資料とのくわしい対比による検討が必要であることも分かった.
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