研究概要 |
三宅島の島内10カ所に,プロトン磁力計のセンサーを設置した.全磁力観測は10月から順次,プロトン磁力計を増やし,8点において連続観測を続けている.本研究で購入した磁力計の他に,地震研究所所有のものも使用している.なお磁力計センサー柱は直径15cmの塩ビ・パイプを用い,20年異常の耐用年数を持ち,本研究期間を越えて,21世紀初等に予想される三宅島火山噴火の監視に使えるように設計した.観測点は離島効果の研究を念頭において,海岸付近にも東西南北に配置した.これは同時に,三宅島火山直下3km付近の,上昇してきたマグマが割れ目噴火を開始する,と推定されている深さを狙い,そこでの熱消磁現象などを捉えられる配置になっている.地磁気湾型変化の振幅が,島の南北で異なるなど,離島効果特有の現象が記録されている.特筆すべきなのは,1995年11月から全磁力が,島内の場所による違いはあるが,5nT以上もゆるやかに増加する現象が見られたことである.この時期に黒潮が東西方向の流れから,八丈島南方で大きく蛇行し,三宅島付近では南北の流れになったことが分かっている.北向きの海流で西向きの電流が誘導される.この電流は高比抵抗な島を避けて流れるので,磁場変化にも場所による違いが出てくる.これも離島効果の一種なので,モデル計算を進めている.黒潮大蛇行に伴う磁場変動は,八丈島の水路観測所の地磁気データで指摘されて来た.今回の観測成果で画期的なのは,多点における全磁力観測値を用いることで,三宅島の周囲を流れる黒潮の,流れの向きと平均流速を決められる可能性が見えてきたことである(一点の観測では不可能).このこと自体,黒潮の海洋学的研究に寄与できる.それと共に,三宅島火山の地磁気による監視において,最大のノイズ要因である海流変動磁場を,補正できることを意味する.
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