地震の発生時やその前後で地電位が変化したり、異常電波の放射があるという報告がある。特に、地震の前に電気的な異常が起こるとすれば、前兆現象として地震の予知に役立つ可能性がある。従って、電位変化の発生のメカニズムの解明が重要である。そのために、これまでは単調に増加する応力下での実験が行われてきたが、本研究では一定の正弦波型の繰返し応力下で電位変化を測定した。 用いた試料は花崗岩の角柱で、4点曲げ方式による引張応力を繰り返し加えた。一サイクルの最大荷重値を一定のままとし、2300回繰り返して、破断に至るまでAEと電位変化を測定した。AEについては長さ方向の位置決定を行い、試料の中央部分で発生していることを確認した。電位測定については、誘導雑音を減らすのに工夫を払った。結果を要約すると、(1)AEと電位変化の信号がよく対応する。(2)最終破断に近づくにつれて、AEも電位信号も急激に増加する。(3)AEの振幅が大きいほど明瞭な電位信号が発生する傾向がある。(4)AE及び電位信号の双方が、荷重1サイクルの中で応力が増加して最大値になる過程で主に発生した。 前の我々の研究で、岩石試料に繰返し荷重を加えて破断させる場合に、荷重が増加して最大値に達する過程で新しい引張破壊が生ずることが明らかにされたが、今回の実験でこの新しい破壊の生成・発展によって電位変化が発生したと結論される。今回の実験では、試料の形状によるためか、荷重の減少過程での摩擦すべりによるAEの発生が少なかったので、摩擦すべりによっても電位変化があるかどうか分からなかった。今後の課題である。 一定応力の繰返し実験で、電位信号が最終破断の直前に急激に増大するという結果は、電位信号が自然地震の前兆現象として観測される可能性を示唆する。
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