研究概要 |
本年度は2層モデルでの理論であるKubokawa(1995,J.Oceanogr.)の拡張を試み、さらに大循環モデルを用いて予備的な数値実験を行った。 Kubokawa(1995)理論の拡張という面では、まず、南北加熱差の影響を含めるために以前より進めていた2レベルモデルの理論を完成させた。この理論では、最初に純粋な風成循環の解を求め、それからのずれによって定在ロスビー波を表現した。この場合の定在ロスビー波もKubokawa(1995)のものと同様の非線形を示し、また、適当な西岸境界条件を与えることにより、亜熱帯反流と同じ様な流れが現れることが判った。しかしながら、2層モデルも2レベルモデルも、鉛直構造の表現としてはまだ不十分である。そこで、多層モデルへの拡張を試み留必要がある。3層以上では方程式系にはヤコビアン型の非線形項が現れる。このような非線形項を含む方程式の理論的扱い方を探るために、3層モデルでの循環境界を越える流れを調べた。その結果、方程式系はかなり複雑ではあるが原理的には解が得られることが判った。 数値モデルに関しては、海洋大循環モデルを各種パラメーターを変えて走らせた。その結果、最終的に亜熱帯前線をモデル内で再現することが出来た。前線の強さがモデル海洋の大きさに依存すること等が明らかになった。実験結果の解析はまだ十分ではないが、亜熱帯前線は、上の理論的考察から予想されるように、西岸域での冷却が上層の密度場を変形させ、それが定在ロスビー波として表層循環に影響を与えているらしいという感触を得た。 上記理論モデルの拡張の知見をもとにして、数値モデルと直接比較可能な理論モデルを作ること、数値実験を繰り返し、解析を進めること、並びに、数値実験と理論モデルの比較を行うことが来年度の課題である。
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