自由振動ロスビー波は、数日から十数日の固有の周期で西進する、大気中の大規模自由振動波である。本研究は、衛星観測データ解析と大気大循環モデル(GCM)による数値実験からなるが、それぞれについて成果をまとめると、以下の通りである。 1衛星観測データ解析結果 (1)NASAの上層大気観測衛星UARS搭載の測器ISAMSによるデータを用いて、5日波と10日波の中間圏における全球的構造を初めて示した。 (2)両波とも、中間圏界面付近で次第に減衰していく特徴が見られたが、それにも拘わらず、特に冬半球の10日波は大きな振幅を保持していた。 2GCMによる数値実験結果 (1)GCM中の5日波は、観測される5日波と非常によく似た鉛直・水平構造を持って、観測結果と同様、1カ月程度の寿命で不規則に出現することがわかった。 (2)GCM中の5日波と雨量について詳しい解析を行った。その結果、雨量の東西波数1、西進5日周期成分の振幅が大きい時に5日波の振幅が増加し、5日波の振幅と雨量の相関が非常に良いことがわかった。 (3)山岳なし、あるいは一様な地表条件でも5日波は存在し、5日波の励起に関して山岳・海陸分布は重要ではないことがわかった。一方、潜熱の解放過程を排除すると5日波の振幅は極端に小さくなった。
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