研究概要 |
1995年11月7日から13日の期間に、東シナ海大陸棚縁辺部において、CTD,濁度計,MSP,サーミスタチェーン、及び係留系による観測を行った。CTDおよび濁度計による断面観測を、陸棚縁辺域の同一測線上で3日間繰り返し調査を行い、水温、塩分と濁度の鉛直分布を得た。そして特に濁度の鉛直分布から興味深い結果が得られた。陸棚上の海底直上では常に高濁度の水が分布し、その濁度の分布は3日間の間に大きな変化は見られなかった。一方、斜面域では、濁度は全体的に低くなっていたが、中層にやや濁度の高くなる層が認められた。またこの相対的に濁度の高くなる層は、隣り合った測点で連続して認められることもあり、この場合には、これらの層がほぼ同じ海水密度の層に分布していることが確かめられた。このことは、陸棚縁辺域の海底で巻き上げられた水が、黒潮域に貫入していることを示唆するものでり、しばしば黒潮域に認められる低塩分水層の形成過程を考える上で、重要な要素となるものであり、陸棚上に分布する物質の黒潮域への輸送に関しても重要な役割を果たしているものと考えられる。MSP,サーミスタチェーン、係留系については、小スケールの擾乱がどのような頻度で生じているか、またその擾乱はどのような構造を持っているかという点に注目した。サーミスタチェーンによる観測では、しばしば顕著な逆転層が見られ、観測海域で鉛直混合が頻繁に起こっていることが示唆される結果を得たが、今回の観測ではMSPによる測定頻度が少なく、海洋の乱れとの対応を十分に見ることができなかった。
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