研究概要 |
本研究は,主として衛生計測データに基づき,大気環境指標である大気エアロゾルの光学特性(化学組成、密度、大きさ等)を導出するためのアルゴリズムの開発を目指すものである。従来用いられてきた散乱光強度だけではなく、新たに偏光度をも併用することにより,エアロゾル推定精度の向上が期待される。 作業は大きく次の2つに分かれる.現在までの研究経過及び成果を,下記にまとめる. (1)アルゴリズムの開発 散乱光シミュレーション値と実測データの偏光度の比較照会から最適なエアロゾルモデルを導出する基本アルゴリズムを作成した[Optical Review Vol.2,pp.298-303,1995;Adv.Space Res.,Vol.17,pp.63-66,1996].結果は,あらかじめ用意したエアロゾルサンプルや気候値の質と量に依存するが,その制限内においても,エアロゾル特性の時間変化や空間変化を検出できた. (2)検証実験 研究室において新たに製作した簡易型多波長偏光放射計(ABE2713)を用いて、エアロゾルの偏光測定を実施した;近畿大学(東大阪市)にて平成7年5月,6月,8月,気象研究所(つくば市)にて8月,平成8年1月つくば市での観測は気象研究所(気象衛生・観測システム部)との共同観測で,気象研所有の簡易型多波長偏光放射計(FPR1000)及び全天型偏光放射計との比較検証を行った.波長変化等の定性的な傾向は一致したが,絶対値の若干の差異がみられる場合もあった[J.C.M.A.(in press)参照]. 当初の予定通り基本アルゴリズムを作成した.ただし,得られたアルゴリズムの応用性を高めるためにはエアロゾルデータベースの充実が不可欠である.これと併行して、エアロゾルデータに依存しない逆転法の開発も考案中である.自前の地上データだけでは不十分なので,他の研究所や機関で測定されているライダーデータ,航空機・気球データの収集・解析を行いエアロゾルデータの質・量の拡充を当面の課題と考えている.
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