研究概要 |
彗星核の起源とそれに関連する種々の物理特性に関する以下の研究成果を得た. 1)核の物性,特に微粒子集合体としての核の熱伝導率をバ-コレーション理論に基づいて決定した.核の熱伝導率は彗星の起源と進化を研究するうえで鍵となる物理量の一つである.従来のparametric theoryに対して,本研究ではバ-コレーション理論に基づいて明確な基礎のもとに,熱伝導率の表式を導いた.この結果は1996年7月にベルサイユにおけるACM96国際シンポジウムにて発表した. 2)彗星シリケートダストの結晶化に関する新モデルを提唱した.彗星ダストのGreenbergモデルの基づき,ダストの有機物マントル中のラジカル反応の際に放出されるエネルギーによるアモルファスシリケートの結晶化というメカニズムを提唱し,結晶化の度合いを定量的に計算した.この研究はLeiden大学グループとの共同研究として行った.結果をACM国際シンポジウムおよび1AUコロキウムにて発表した. 3)NATO ASI宇宙化学国際において行った彗星核の氷の起源と進化についての講義の講義録を執筆した.これは現在印刷中である. 4)惑星領域の外側に最近相次いで発見されつつあるEdgeworth-Kuiper belt objects (EKOs)の研究の現状と太陽系形成論における発見の意味について,Science誌(American Association for Advancement of Science)からの依頼に応じてPerspectiveを執筆した.この論文ではEKOsの始源性および太陽系外部域における微惑星の残存について論じた.
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