地球極城電離層から磁気圏に向けて放出される酸素イオンの撮像可能性を研究した。この酸素イオン流の存在は衛星観測により良く知られてきたが、流れの経路を大局的に調べるために撮像を行わなければならない。撮像の為にどの程度の明るさの光学系が必要か、背景光の混入を防ぐためにどの様な素子が必要かを検討した。酸素イオンによる共鳴散乱の明るさの見積もりには、太陽により直接照らされる効果の他に電離層F層に存在する酸素イオンからの反射光の影響を見積もった。また、酸素イオンが光源に対して流れる事によるドップラーシフトの影響を考慮した。あけぼの衛星による観測をモデル化して極域上空に存在する酸素イオンからの共鳴散乱光強度を求めたところ、その輝度が0.01-1.0レイリーであることが解った。さらに地球磁気圏尾部に存在する酸素イオンの撮像可能性について研究した。磁気圏尾部における酸素イオンの存在は数年前まで知られていなかったが、磁気圏探査衛星ジオテイルがローブ領域において温度が極めて低く、かつ高密度の酸素イオンの存在を確認した。この酸素イオンを撮像することが出来れば磁気圏尾部の全貌を捉えることが出来るため、磁気圏のダイナミクスを研究する上で大きな進歩となる。酸素イオンは太陽に対して相対運動をしているため、その共鳴散乱の波長がドップラーシフトを受ける。しかし酸素イオンは834A∃の近辺に3本の共鳴散乱線を持ちそれらが互いに極めて近い。従って相対運動によるドップラーシフトを受けても再び別の輝線と共鳴散乱を行うことが出来る。この効果を取り入れ共鳴散乱の効率を表すgファクターを計算した。この結果、光の強度は0.1-10Rayleigh程度であることが確かめられた。0.1Rayleighの光1Re(地球半径)空間分解能で撮像するためには25センチ口径の望遠鏡で約10分間の露出を行えば可能であり、この研究により磁気圏尾部の撮像が原理的に可能であることが示された。
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