研究概要 |
EISCAT CP1観測モードのデータを用いて、ある特定期間における中性風の平均成分および潮汐成分を調査した。これまで我々が進めてきた統計的な研究によって、オーロラ電離圏に顕著な東向き平均風が存在し、それが季節変化をしていること(Brekke,Nozawa,Sparr,JGR,99,8801-8825,1994)、さらにこの東向き平均風は地磁気撹乱の影響をほとんど受けないこと(Nozawa and Brekke,JGR,100,14,,717-14,734)が明らかになっている。しかし、この平均風の成因のメカニズムはいまだ解明されていない。この成因を調べるためには、統計的な手法により、個々の観測データを解析する手法が適していると考え2つのデータセットを用いて研究を行った。 1987年9月21日から25日にかけて4日間行われた観測データを用いた研究からは、地磁気静穏時における平均風は、地理的効果が支配的であることが示された。また、地磁気擾乱の効果は、ある高度以下(以上)では東向き平均風を減衰(増幅)させることが示唆された。1988年3月16日から20日に取得された観測データから導出した東向き平均風と12時間周期成分の強度は、統計的研究や理論的研究から期待される値と比較し半分以下であった。このことは、12時間周期成分の成因となる潮汐波が中間圏においてプラネタリー波等との通常より強い相互作用のため、変調または減衰したと解釈される。さらに、平均風の成因が大気下部に発生する重力波等の波動であることが示唆され、今後の研究にとって非常に大きな観測的結果が得られたと考えられる。 今後さらに他の観測モードのデータ解析、光学機器による観測、シミュレーション手法を用いた研究などを行い、さらなる極域E層中性風の解明を進める予定である。なお、備品として購入した磁気ディスクサブシステムは、データの蓄積およびその解析にとって非常に有力な装置として用いられている。
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