極域電離圏における中性風の研究は、ISレーダ、光学機器などを主要な観測手段として行われている。なかでもISレーダを用いた手法は、電子密度、イオン温度、電子温度、イオン速度の情報を高い時間・空間分解能で観測でき、数日にわたる連続観測も可能であることにより、非常に強力なものである。平成8年度においては、1)EISCATレーダーを用いた特別実験とファブリペロ-分光計との同時観測の実施、2)Common Program 2 (CP2)データを用いて、高い高度分解能(〜3km)で中性風の高度変動の解明、3)シミュレーション手法によるE層中性風と下部大気に起源を持つ種々の波動との相互作用を調査した。 ISレーダによる中性風の導出は、上記した利点を持つが、間接的である。光学機器による中性大気の放射光観測は、直接的なものであるが、高度方向に対して観測値が積分量であり、しかも晴天の暗夜にのみ、観測が限られる。これらを考慮して、同時観測を平成9年1月から2月にかけて実施した。現在取得したデータの解析を進めている。EISCAT CP2観測データから、モノスタティック手法により、3次元イオン速度を導出する解析ソフトウエアの開発を行い、さらに中性風導出のソフトウエアを開発した。現在、1987年から1996年までに得られたCP2データを用いて、平均および周期風の研究を進めている。これまでの我々の研究によって、極域E層中性風の平均風は、季節変化をしていることが明らかになってきているが、その成因については未だ不明である。この成因を解明するため、米国立大気科学研究所が開発している、Thermosphere-Ionoshphere-Mesosphere-Exsosphere General-Circulation-Modelを用いて研究を進めている。
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