本研究は平成7年度から9年度まで、成層圏オゾンを始めとする成層圏微量気体成分の人工衛星データの有効利用を図り、その地球規模での動態を把握することを目的として行った。 1.SAGEII(Stratospheric Aerosol and Gas Experiment II)の1.02μm、0.525μm、0.453μm、0.385μmのエアロゾル消散係数の波長依存性を1985-1993年までの期間について解析した。波長依存性を示すオングストローム係数を各月ごとに緯度5度毎に求めた。火山噴火直後に波長依存性に変化がみられ、非常に大きな粒子が存在したことが示唆された。静穏時においても、高度・緯度で粒径分布が異なることや、熱帯で高緯度より粒径が大きい傾向が示された。 2.SAMII(Stratospheric Aerosol Measurements II)の1981-1992年のデータ1.0ミクロンの消散係数を解析し、PSCの発生確率を各年毎に求めた。 3.ADEOS衛星搭載のILAS(Improved Lim Atmospheric Spectrometer)のデータを解析した。ILASは両極の高緯度でエアロゾル・オゾンなどの高度分布を観測したセンサーである。ILASのエアロゾルデータから、以下の観測事実を明らかにした。 ・1997年1月から3月にかけて北極で、また1997年6月に南極でPSC(Polar Stratospheric Cloud)の発生が観測された。 ・1997年1月から3月にかけて北極観測されたPSCのデータを過去のSAMIIデータと比較したところ、3月までPSCが出現していたのは、極渦が長く持続した年の冬に限られることがわかった。
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