研究概要 |
1.南部北上帯の形成と古地理的変遷を明かにするために,(1)南部北上帯の先シルル形基盤岩類の形成過程・年代,(2)南部北上帯の古生代〜前期中生代古生物地理区,とくに頭足類古生物地理区に関する研究を行った. 2.(1)に関しては,主として南部北上帯西縁部に分布する松ケ平・母体変成岩類・正法寺閃緑岩と上部デボン系鳶ケ森層について野外地質調査を行い,地質図を作成した.採集した研究用試料試料については,岩石薄片を作製し検鏡するとともに,化学分析を行い,化学組成について検討した.また,放射年代測定試料を作製し,年代測定を依頼した.正法寺閃緑岩の3試料のホルンベレンドについては,434【minus-plus】20,440【minus-plus】20,432【minus-plus】20 MaというK-Ar年代が得られた.この年代値は,野外での観察から得られた正法寺閃緑岩の層位的位置,正法寺閃緑岩は松ケ平・母体変成岩類より若く,上部デボン系より古いという位置づけと矛盾しない.する.すなわちこの年代(オルドビス紀後期)を正法寺閃緑岩の年代と考えることが妥当であることがわかり,南部北上帯の形成期の構造発達史に関する重要な資料 3.(2)に関しては,南部北上山地の主要地域,とくに気仙沼周辺地域のペルム紀〜三畳紀頭足類化石の産出層準の地質調査と頭足類化石の採集を行った.従来頭足類の資料がなかった下部ペルム系および資料が極めて少なかった中部ペルム系上部からまとまった標本を採集することができた.このうち下部ペルム系中平層の頭足類群巣について記載し,報告した(Ehiro,1995).中期ペルム紀の群巣については公表準備中であるが,当時の低緯度地域に特有の群衆組成を示している.
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