研究概要 |
シラス斜面内部での劣化分布をみるため,南九州地域で2箇所を選定し,いくつかの測線を設定して,土壌硬度計による強度変化とサンプラーによる採取,乾燥密度,間隙率等の測定を行ってきた.具体的にはシラス斜面に直交する防空壕や人工的なカット法面を利用した.その結果,バラツキは多いものの,強度の低下範囲は斜面表層から少なくとも10mまで及んでいること,また最も強度低下しているのは必ずしも表層ではなく,表層から2〜3mの位置であるらしいことが明かとなった.これは,ごく表層では褐鉄鉱等による化学的硬化のためとも考えられる.崩壊に関して従来注目されていた斜面表層の“表土"のなかには,化学的な硬化のため,強度的にはシラス本体と大差ないものも存在することが明かとなった.シラスの乾燥密度,間隙率等も強度分布とある程度対応して変化しているが,対応の仕方は微妙であり,化学的変化も含めて検討の余地がある.換言すれば,斜面表層での強度の低下部と透水性の大きい部分は必ずしも対応しない可能性があり,これがシラス斜面での崩壊を複雑なものにしているらしい. 今回の調査で,強度低下とともに斜面崩壊に影響するクラックは,シラス内部でも部分的に存在することが確認された.このことから,クラックの成因はシラス形成時の冷却節理の可能性があり,劣化過程で開口して顕在化すると考えるべきであろう. 従来いわれていたような“表土"だけでなく,こういったシラス斜面内部での劣化程分布が明らかになれば,この地域で頻発する斜面崩壊の長期的な予測とそれをベースにしたハザードマツプにまで発展させることができる。
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