研究概要 |
今年度(平成7年度)は,主に,秩父盆地の荒川沿岸の河成侵食段丘面群を調査地域に選定し,まず,ボーリング,試掘,弾性波探査などを用いて,段丘面を形成する基盤岩石の風化帯の分帯と,それらの各分帯ごとの厚さの計測を行い,段丘面の離水年代値との両者から,それらの各分帯ごとの風化速度を推定した.同時に,各風化帯ごとに岩石試料を採取し,それぞれの物理的(透水係数,間隙径分布)・力学的(山中式貫入硬度,一軸圧縮強度,引張強度)・化学的(蛍光X線分析)・鉱物学的(X線回折,薄片観察,電子顕微鏡観察)諸性質の計測を行った.野外調査,室内実験ともに,現在のところ順調にデータの収集が進行している. 野外調査及び室内実験で得られた種々の計測結果は,現在,鋭意解析中であるので厳密な議論はできないが,これまでに得られた新たな知見は,定性的ではあるが,以下のようなものである. (1)風化速度は,時間とともに指数関数的に遅くなる. (2)微風化,弱風化,中風化,強風化と風化程度が高くなるほど,風化速度は遅くなる. (3)同一または類似の風化環境下では、硬岩よりも軟岩の方が,その風化速度が大きい. (4)広い段丘面の下に比べて,段丘崖に近づくほど,風化速度が速い. (5)風化物質の色調,節理間隔(割れ目),硬さなどに関する視察は,他の種々の定量的物性(縦波速度,横波速度,山中式貫入硬度,間隙径分布など)と比較することによって,かなり有力な分帯方法になりうる.
|