研究概要 |
“古東京湾"の堆積物の堆積シークェンスを支配する要因を明らかにする第一段階として,従来“古東京湾"の堆積物の特徴とされてきた下総層群の“堆積サイクル"の再検討をおこなった.すなわち,各層準において堆積相解析を行いそれらを形成する堆積システムの認定から“堆積サイクル"の詳細を明らかにした.また,既に報告されているテフラの対比により各システムの古東京湾での分布を復元し,古東京湾全域での“堆積サイクル"の特徴を初めて明らかにした.このように古東京湾全体での堆積システムからの検討をおこなったことによって従来岩相記載的だった堆積サイクルの成因的特徴が明らかになった.詳細は次のようである.1.下総層群の堆積サイクルはエスチュアリ-やバリアーシステムからなる海進層と三角州や外浜-海浜システムからなる海退層の繰り返しからなる.2.このような堆積サイクルは,下総層群の下位から,地蔵堂層,薮層,上泉層,清川層,木下層にみられる.3.下総台地のおおよそ村田川低地を挟んで南部地域と北部地域でき異なる堆積サイクルの発達がみられ,岩相的には南部地域は砂が多く層厚が厚く,北部地域は泥がちで薄い.これは南部地域は河川がつくる三角州システムで,北部地域はバリアーシステムで特徴づけられることによる.4.このような堆積環境のセッティングは,現在の下総台地の環境条件とよく似ており,“古東京湾"地域では約50万年前から現在まで似たような環境変遷を繰り返していたと考えられる.5.これらの堆積サイクルは第四紀末の氷河性の海水準変動によって形成され,その空間的変化は堆積物の供給量によるものであることがわかった.今後の課題として,下総層群堆積時の氷河性海水準変動の個々の周期にみられる微妙な変化がどのように堆積サイクルに影響を及ぼすかを明らかにし,それぞれの氷河性海水準変動との関係から“古東京湾"の堆積シークェンス認定する.
|