研究概要 |
沖縄県石垣島北東部の吉原付近の水深約1.5mのサンゴ礁に自動記録式センサーを設置し,約1年間に渡って30分間隔で海水温と塩分データを記録した.また,センサーの周辺に生息する造礁サンゴPorites sp.とシャコガイの仲間のHippopus hippopusを数個体づつ採取した.海水温は18〜32℃の範囲で,塩分は34.0〜34.5‰の範囲で年周あるいは日周変化することが認められた. 同時に,造礁生物の生産量と石灰化量を決定するため,周辺の海水も採水し,現地でpHとアルカリ度を測定した.また,これらの海水を実験室に持ち帰り,海水のδ^<18>Oと無機炭素のδ^<13>Cを東北大学現有設備の質量分析計DeltaSを用いて測定した.さらに,ICPと原子吸光装置を使用して海水中のCa,Mg,Sr,Na,K,Baイオンの濃度を定量した.これらの化学成分は塩分に依存し,温度には依存しないことが判明した. 造礁サンゴとシャコガイから厚さ約5mmの薄板を切りだし,年輪を認識するため,ソフトX線写真を撮影した.また,骨格の表面をEDTAでエッチングし,走査型の電子で微細構造を検討した.その結果,シャコガイ骨格からは幅20-50μmの日輪と考えられる成長線が見い出された. 年輪に対して垂直方向に約25μmの間隔で約3年分,100個の試料を削り取り,海水の場合と同じ方法で酸素・炭素同位体比とCa,Mg,Sr,Na,K,Ba濃度を測定した.その結果,造礁サンゴとシャコガイの酸素同位体比は年周変化を示すことが確認された.
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