研究概要 |
平成7年8月に沖縄県石垣島北部の吉原沖サンゴ礁の礁原で,温度・センサーを設置し,30分毎に海水温と塩分を測定した.なお,このセンサーは現在もデータを記録している.センサーの周辺からシャコガイ(シャゴウ; Hippopus hippopus)を5個体採集し,センサー近くのオリに入れて飼育した.また,吉原背方の川平水路より,造礁サンゴ(Porites lutea)を採集した.これらの骨格試料から厚さ約5mmの薄板を切り出し,可視光とソフトX線で写真を撮影した.その結果,造礁サンゴには幅1.2cmの年輪が,シャゴウには1.1cmの年輪が観察された.また,シャゴウの薄片に光学顕微鏡で観察したとこと幅20〜50μmの日輪が認められた.日輪は冬に幅が狭く,夏に広いことが判明した.また,全天日射量と海水温と相関がよい. 平成8年度には,前年度に採集した造礁サンゴとシャコガイ殼の酸素・炭素同位体比をフィニガン社製質量分析計deltaSよって分析した.成長線を測定した測線に沿って同位体比を測定したところ,いずれの酸素同位体比も夏に軽く,冬に重いことが判明した.シャゴウ殼の酸素同位体比は海水と平衡下で析出したものと同じであることが判明し,温度の良い指標となることが確認された.また,Porites lutesの炭素同位体比は明瞭な年周変化が認められないのに対して,シャゴウの同位体比は平成8年以降顕著であることが明らかになった.造礁生物周囲の海水の炭素同位体比変化を反映している可能性がある.
|