研究概要 |
平成8年8月に鹿児島県喜界島北東部志戸桶において,段丘面の地形を光波測量計を用いてmmの精度で測量し,地形断面図を作成した。その結果,段丘面I〜IV面を認識することができた。断面図の測線に沿って約10m毎に1x1mの方形区を設置し,段丘面II〜IVの化石造礁サンゴ群集を記載した。また,測線を現在のサンゴ礁まで延長し,方形区法によって水深0〜6mの現生造礁サンゴ群集を記載した。これらの調査によって,段丘面上に分布する化石群集は水深0〜5mの極めて浅い群集と縁溝群集からなることが判明した。方形区データを作成する際に,現地においてAMS^<14>C年代測定用の試料も採集し,ニュージーランド地質・核科学研究所で^<14>C年代を測定した。その結果,II面は5592〜3859yrsB.P.,III面は2868〜2633yrsB.P.,IV面は2143〜1212yrsB.P.であることが判明した。 第四紀完新世の古気候を復元するため隆起サンゴ礁の造礁サンゴとシャコガイの成長線と酸素・炭素同位体比を測定する予定である。しかしながら,これらの解析を行うためには現生の試料を用いて,海水温・塩分・日射量などの気候と成長線や同位体比などの骨格中の記録がどのような関係にあるか,予めモデルを作成する必要がある。そこで,平成8年7〜8月に沖縄県石垣島吉原で現生造礁サンゴとシャコガイ殻を採集し,温度・塩分センサーを設置した。これらの骨格の成長線を解析した結果,成長線には年輪と日輪が存在することと日輪は全天日射量と海水温に相関が高いことが明らかになった。また,同じ試料に付いて酸素・炭素同位体比を測定したところ,シャコガイ殻の酸素同位体比は海水と平衡下で析出したものと同じであることが判明し,温度の良い指標となることが確認された。
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