研究概要 |
陸源有機炭素同位体比(n-C_<29>alkane)とイオウ同位体比の急減を伴う中層水底生有孔虫の大規模な絶滅の層準をニュージーランド北島南東部のアキティオ川に沿うタワヌイセクションで発見した。その底生有孔虫種の絶滅(25%)は55.5Maで約3千年に渡って起きた。気温と雨量の増加を意味するカオリナイトの増加が、その絶滅の約3千年前に始まり約4万年続いた。浮遊性有孔虫と石灰質ナンノプランクトンの生産量の減少もその絶滅の約3千年前に起き絶滅時に回復した。陸源有機炭素の割合もまた絶滅の約3千年前に起き約4万年続いた。これらの3つの先絶滅事件は、温暖化、高雨量、表層水の塩分濃度の減少と温暖高塩分深層水(WSDW)の生成によって説明可能である。底生有孔虫の酸素指標は、絶滅事件と同時に溶存酸素が顕著に減少したことを示している。ケロジェンの炭化水素と全有機炭素量の増加はこの溶存酸素の減少を支持する。この最も低い溶存酸素状態は、石灰質底生有孔虫の生産量の顕著な減少、高全有機炭素量と低炭素同位体比と同時に約4万年間続いた。高緯度海域の温暖化と高雨量化に始まって、WSDWまたは不活発な深層水循環の優勢化までに要する時間が、(1)底生有孔虫の絶滅事件と炭素・イオウ同位体比の減少と同時の低溶存酸素状態と(2)陸上と表層水の先絶滅事件の間に、約3千年の時間さを生んだと思われる。その後すぐに高緯度海域で起こるであろうWSDWの湧昇は、高緯度海域の塩分濃度の回復とそれに付随する浮遊性有孔虫と石灰質ナンノプランクトンの生産量の回復に対応しているようだ。 スペインのカラバカとツマヤの白亜紀/第三紀境界と暁新世末の絶滅層準から試料採取を行い,現在,微化石と有機物の分析を行っている.
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