研究概要 |
古太平洋(パンタラッサ海)海域で形成されたと考えられる日本列島の後期古生代〜中生代各紀の古生物礁を研究対象として,その分布・規模・化石内容に関する野外調査と化石種・内部構造に関する室内での検討を,昨年度に引き続いて行った.野外調査の対象は,南部北上帯日頃市層,同高清水山層,秋吉帯青海石灰岩(以上石炭紀),南部北上帯岩井崎石灰岩(ペルム紀),渡島帯上磯石灰岩,秩父帯田穂石灰岩(以上三畳紀),秩父帯鳥巣石灰岩(ジュラ紀)である.調査検討の結果,1)付加体地質区の海山縁辺相の古生物礁は比較的堅固な構造を持つ,2)島弧起源の古生物礁は礁マウンドの構造を示す,3)古生物礁の付随堆積相は時代によって異なる.ことが明らかとなった. 日本列島の後期古生代〜中生代の古生物礁の生物群集構成と枠組み構造について整理し,それらと世界各地の同時代の生物礁との比較検討を行った.その結果,1)生物群集構成の時代変化は汎世界的な傾向とほぼ合致する,2)石炭紀前期,ペルム紀後期,ジュラ紀の各生物礁の枠組み構造はより堅固である,ことが明らかとなった.さらに,北米西岸〜アラスカやオーストラリア東部などの古太平洋域で形成された古生物礁を比較整理した結果,1)古太平洋の生物礁は世界の同時代の生物礁に較べて,より多様な生物群集とより堅固な枠組み構造を示す,2)環太平洋地域における各時代の古生物礁の分布は地域によって偏りがあり,これは当時の海洋プレートの分割配置を示している,ことが明らかとなった.
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