研究概要 |
本年度は蝦夷累層群の中でも浅海堆積相を含む三笠層と函淵層群について,北海道中央部の三笠地域,大夕張地域に焦点を当てて調査研究を実施した。また穂別地域と北海道北部中頓別地域を予察的に調査した。 三笠層については既に蓄積している堆積相および堆積相分布データを加えて,三笠層は相対的海水準変動による3つの堆積シーケンスから構成され,それぞれの構成堆積相は場所によって異なることが判明した。そして,三笠層分布域北部の二枚貝を中心とする軟体動物化石群集について,組成変化・分布・群集変遷・古生態進化の基礎データを収集した。三笠層の軟体動物化石群集はセノマニアン型とチューロニアン型に分かれ,両者に共通する要素は極めて少ない。これはセノマニアン-チューロニアンの大量絶滅を反映したものと思われ,両者で生態型が変化しており,新しいほど深所潜没型種が多い。これは恐らく真骨魚類や骨殻類,腹足類などによる捕食圧増大への反応と予想される。三笠層の群集は高海面期堆積体のストーム成細粒砂岩相に多く見られる。こうした成果は1996年1月の古生物学会で講演発表した。 一方,函淵層群については模式地である大夕張地域の大夕張ダム周辺で詳細なシーケンス層序を確立した。大きく2つの堆積シーケンスからなり,第2シーケンスには河川成が卓越する低海水準期堆積体が発達し,よい鍵層として芦別地域,穂別地域にも追跡できる。この成果は1995年11月の堆積学研究会で講演発表し,96年4月の日本地質学会でも報告する。 また,北海道北部の中頓別地域での概査から,ここでは函淵層群は沖合いの泥岩相が卓越し,北海道中央部とはかなり異なることがわかった。そのためシーケンス層序の確立はかなり困難であると予想される。
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