研究概要 |
本年度は、主に既存試料の処理とそのデータ整理、初年度に採集した試料の薄片処理、そして新規の野外調査を行った。新規野外調査は、岡山県の阿哲石灰岩、秋吉帯東北縁部に露出する青海石灰岩、美濃帯の舟伏山石灰岩でそれぞれ行った。また、国外におけるArchaediscacea上科有孔虫の新規試料として、イラン北西部、エルブルズ山脈のシャハミザードセクションに発達するモバラク層からの試料の検討を開始した。 予察的ではあるがこれまでの検討から、本邦下部石炭系から産するArchaediscacea上科有孔虫類の生層序については、産出としてはVisean中期からほぼBashkirian担当層まで認められるものの、多産するのはViseanおよびSerpukhovianであり、最上部Visean(あるいはVisean-Serpukhovian境界)とMid-Carboniferous境界(=Serpukhovian-Bashkirian境界)の2層準において群集要素の変化が認められる。Archaediscacea上科有孔虫類の群集変遷としては、Visean後期までがArchaediscus,Paraarchaediscus,Viseidiscusが主体であるのに対し、その後はNeoarchaediscus,Asteroarchaediscusが主要要素となり、それにArchaediscus,Paraarchaediscusが付随するようになる。また、今のところ、本邦石炭系からは、その絶滅が北米やヨーロッパ地域でのMid-Carboniferous境界の指標となっているEosigmoilinaやBrenckleinaの産出は確認されていない。今後、Mid-Carboniferous境界の世界的な対比といった観点からも、これら分類群の古生物地理に関して詳しく検討する必要がある。
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