本年度は、当初目的としていた四国秩父帯のリン酸塩ノジュールの資料と共に、ニュージーランド北島のワイパパテレーン北部のペルム紀試料を研究材料とした。 リン酸塩ノジュール試料から産するAlbaillellaria亜目については、内部骨格構造の検討を加え、ペルム紀後期のNeoalbaillella属や、Albaillella属、Follicucullus属等の系統関係を考察した。さらにPopofskyellidae科と考えられる円錐形の放散虫や、所属不明の大型の放散虫についても分類を検討している。とくにPopofskyellidae科のものは中生代のNassellariaに極めて類似した外形をもっている。産出頻度は少ないが、現在のところ内部骨格は観察されず、Popofskyellidae科はペルム紀後期まで生存していたと思われる。球形のSpumellariaについては、この試料でも多くの個体は内部に泥質のmatrixが詰まり、除去に成功していない。今後、クリーニングに工夫を重ねる必要がある。 ニュージランド、ワイパパテレーン北部の小島Arrow Rocksには、玄武岩から層状チャート、緑色泥岩に至る連続した露頭が露出している。このうち玄武岩上のチャート層からAlbaillella triangularis、Hegleria sp.などを含むペルム紀後期の放散虫化石が産出した。また玄武岩最上部の石灰岩レンズは、塩酸や酢酸による処理では残渣が全く得られなかったものの、沸酸と硝酸による処理によって、保存良好な多数の放散虫穀を得ることができた。この処理法は全く新しい方法であり、今後石灰岩の処理には有効であると思われる。この試料からは数種のFollicucullusが得られ、恐らくペルム紀後期のものであると考えられる。また、Follicucullus属の新種、2種も含まれている。これらのAlbaillellariaは保存がよく、一部は内部の観察も可能であり、今後リン酸塩ノジュールの試料と合わせ、ペルム紀後期の放散虫群集を解明するうえで重要である。
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