研究概要 |
1.現生キクザルガイ科二枚貝のこう歯の逆転について 左殻固着種群ではChama pulchella,C.ruderalis,C.fibula,C.limbula,右穀固着種群ではPseudochama granti,Eopseuma palaeodontica,Amphichama argentata,A.scutulina,Arcinella arcinellaでこう歯の逆転みられる。 キクザルガイ類の逆転は、一般にこう歯と固着殻の逆転が伴って観察されるが、Chama pulchellaでは固着殻のみの逆転個体が今回の調査で発見された。 基本的に左右対称の体制を持つ二枚貝では部分逆転と全逆転両方の可能性が予想されたが、これまでの研究では部分逆転しか知られていなかった。全逆転の可能性の検討のため、東京大学海洋研究所所蔵のAmphichama argentataの殻及び軟体部の提供を受けた。殻では30〜40%の個体で逆転が観察された。 2.トマヤガイ科ほか Cyclocardia ferruginea:瀬棚層、浜田層、大釈迦層、鮪川層、広野層、灰爪層、十二町層、西帰浦層、木下層、及び現生の標本4511個体中27個体(0.60%)で逆転。 Cyclocardia crebricostata:円山層、勇知層、鮪川、及び現生の標本250個体中3個体(1.20%)で逆転。 Cyclocardia siogamensis:黒瀬谷層、本谷層、中山層の標本760個体中2個体(0.26%)で逆転。 このほか、Cyclocardia 11種、Megacardita 4種、Cardita 1種、Tridonta 7種で化石個体群及び現生個体群で逆転の頻度を求めた。地質学的時間と頻度の関係については平成9年度に検討する予定である。 3.腹足類の種分化の1要因と考えられる逆旋は、真の逆旋(sinistral)と見掛けの逆旋(hyperstropic)を区別する必要がある。Wenz(1938)が正旋とした古生代のPoleumita(Eucyclotropis)は真の逆旋、逆旋としたMacluritesはhyperstrophicと考えられる。
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