研究概要 |
本研究は西南日本のジュラ紀付加体の一部を構成する下部-中部三畳系堆積物を研究対象とし,それに含まれる放散虫化石群集を解析し,岩相・層相変化と放散虫化石群集の変化の関連を検討して,当時の海域環境の変遷を復元することを目的としている.この目的に対して1995年度には美濃帯の下部-中部三畳系連続層序断面の詳細な野外調査を行い,岩相記載・岩石試料の採集・放散虫化石摘出処理・化石検鏡・及び一部の岩石薄片の作成と検鏡を行った.その結果,以下の成果を得た. 1.検討層序断面において,下部三畳系上部統の放散虫化石を産出する層準は,大略的に灰色珪質粘土岩で代表され,黒色泥岩薄層とドロストーン団塊を含むという一般傾向を持つ.一部の層序断面では赤色泥岩(層厚数十cm)を伴うことも見い出された.放散虫化石群集の構成は,種数が少なく非常に多様性が低い. 2.中部三畳系の層準は,層状チャートで代表され,下位の珪質粘土岩から漸移する.一般的に赤色を呈するが,灰色・黒色を呈する層準を挟む.放散虫化石群集は,上位に向かって種数が増加し多様性が高くなる. 三畳紀古世当時,灰色珪質泥岩・黒色泥岩は広範囲に広がった貧酸素海洋底で堆積したと想定されるが,一部に赤色泥岩が挟まれることから当時の堆積環境の多様性が明らかになった.また,下位の珪質粘土岩から上位の層状チャートへの岩相変化は,放散虫群集の多様化と密接な関係があることが明らかとなった.
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