研究概要 |
セジメント・トラップ試料を用い、海洋の表層で生産された珪藻殻が、水中を沈降する過程や海洋底で受けるinformation lossの評価を行なった。セジメント・トラップは北西太平洋の日本海溝上(34°9.8′N、141°59.27′E)に1991年3月5日から1992年3月2日までの約1年間、水深916m、3422m、5429m、そして8430mに設置された。また、海洋底表層での溶解を評価するため2個の堆積物試料中の珪藻組成も明らかにした。4層におけるフラックスの変動を比較し、3442m層と5429m層に共通して現れる明瞭なピークを識別した。この2つのピークの比較から、71m/day以上というフラックスの沈降速度が求められた。さらに、この2つのピークと堆積物間での珪藻組成の差から、sediment-water interfaceでの殻の溶解作用が、堆積物中に保存される珪藻群集の組成を決める主要なファクターであることが明らかになった。さらに、Nitzschia bicapitata-bifulcata complex,Neodelphineis indica,Chaetoceros speciesが、黒潮系水下では、わずか数%を残して溶解作用を受ける珪藻グループとして識別された。これらはセジメント・トラップにおける珪藻組成の約55%から50%を占める。即ち、水中を沈降する珪藻の少なくとも50%はsediment-water interfaceで溶解される。
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