本年度においては、前年度に導入した高温合成炉を用いて、出発物質Mg_2SiO_4オリビンやMg_3Al_2SiO_3O_<12>-MgSiO_3固液体組成のガラスを合成し、それらを高温高圧で処理し、高圧鉱物スピネルMg_2SiO_4およびメ-ジャライトガ-ネットを合成した。これらを出発物質として、高温高圧X線回折実験を行いスピネルMg_2SiO_4及びメ-ジャライトガ-ネットの圧縮率と熱膨張率の精密決定を行った。スピネルに関しては実験は18GPaから24GPa、25℃から800℃の温度圧力範囲で行った。また、メ-ジャライトガ-ネットについては、6GPa-23GPa、20-500℃の温度圧力範囲において実験を行った。前年度の研究成果を含めると、上部マントルとマントル遷移層の重要な構成鉱物の状態方程式を明らかにすることができた。以上の実験により決定した状態方程式にもとづいて、地温勾配に沿った上部マントルとマントル遷移層でのマントル構成鉱物の密度を計算し、地震学情報と比較した。その結果、パイロライト組成で期待される上部マントルとマントル遷移層を分ける410kmの地震波不連続の密度ジャンプは、地震波速度分布(PREM)から期待される値より小さく、観測値を説明するためには、マントル遷移層の上部のオリビンの量がパイロライトよりも大量に存在する必要があることが明らかになった。
|