研究概要 |
主に海底熱水鉱床および黒鉱鉱床産の鉱石中に認められる種種の組織解析し,結晶サイズ分布(CSD)理論及び硫化鉱物の元素の拡散性から検討し,鉱床生成プロセスを考察すること研究目的とした. 1)硫化鉱物の組成ゾーニング,粒子サイズ等より核生成率,成長速度等の考察を行い硫化鉱物中の元素の拡散の凍結温度および冷却速度を求めた.これにより,鉱床の冷却史の解明が可能となっている.特に,接触交代鉱床に産する閃亜鉛鉱結晶中に病変状黄銅鉱がどのように形成されるかについての研究を行った.購入した機器を用いて,病変状組織を呈する部分に含まれる黄銅鉱の微細な結晶粒一つ一つのサイズ(面積,周囲長,長径,短径),伸長方向等のデータを画像処理解析し,さらに粒子の密度について検討した.我々のグループで実験的にもとめた拡散データを,このカイネチックなプロセスに応用し,病変状黄銅鉱結晶の成長速度と元素の閃亜鉛鉱結晶中の拡散時間との関係の解明した.現在,この成果の一部をまとめて,国際誌Economic Geologyに投稿中である. 2)ブラジル産金-テルル鉱石組織の形成とその変化の解析を行った.特に,テルル鉱物の鉱物組合せと化学組成,および,それらのこうぶつの結晶学的研究を行った.これらのデータを天然の鉱床および鉱石に応用し,鉱化生成プロセスを明らかにし,研究報告として発表した. 3)Zn‐Ag‐S系鉱物の合成とその鉱物安定関係,結晶成長速度の実験を行い,さらに,水熱合成法によるAgNO_3溶液中のZnSの分配実験を行なった.AgNO_3溶液中のAg^+/Zn^<2+>比,閃亜鉛鉱中のAg_2S/ZnS比から各温度における平衡定数を求めたところ,低温ほど平衡定数が高い傾向が認められた.Ag溶液とZnSとの銀の分配が天然の鉱物生成条件の推定に有効であることを示した.
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