研究概要 |
野外調査では、明らかに鉱床を伴う花コウ岩類として、山形県の台山岩体、山口県の鳳翩山岩体を選び、また、明確な鉱床を伴わない岩体として、島根県雲城花崗岩体とその周辺の補足的なサンプリングを行った。調査は,岩体内部の岩相変化、変質、鉱脈、粘土脈、帯磁率変化などに注目して行ったが,その結果,台山岩体は1),岩相変化が大きく,組成的には閃縁岩から花コウ岩まで変化している.2)その岩相変化は水平的な違いだけではなく,垂直的な標高の違いでも変化している可能性がある,3)花コウ岩質岩石のほとんどは特に有色鉱物を中心として変質している(恐らくプロピライト変質)。一方、鳳翩山岩体と雲城岩体については、新鮮な岩石を中心にサンプリングをし直した。 室内実験では、新たに得られた試料についてXRFにより全岩主要元素の化学分析を行った。特に、台山岩体については、昨年調査した、中の股岩体との関連性が強く、距離的に最も近いところで約2kmしか離れていない、岩相が閃縁岩から花崗岩まで変化し、両岩体はよく類似する、主要化学組成も両岩体は同じトレンドにのる、ことが明らかになった。 また、雲城岩体の熱水変質について、回析X線分析を詳しく行ったところ、セリサイト変質を被っていること、そのセリサイトの多形は2M1が70〜100%であり、高温の熱水変質を受けたこと、などが明らかになった。 今後は微量元素の分析と、花崗岩中の流体包有物、やリン灰石のハロゲンとREE分析を行うこと、さらにはこれらの手法を他の岩体に広げて広域的な特徴を探り、鉱化岩体と不毛岩体の一般性を見出したい。
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