研究概要 |
頁岩の中には,銅,鉛,亜鉛など重金属元素に富むものが見出されている。本研究は,我が国の新第三系頁岩について,基本的記載などを行い,含金属頁岩の時空分布および成因,特に生成環境のモデル構築を目的とした。本年度(最終年度)は,調査,分析を継続するとともに,比較検討のための他地域の頁岩の分析や既存文献のコンパイルを行い,モデル構築を行った。主要な成果を以下に示す。 野外調査の結果,珪質から泥質まで様々な岩相の頁岩が認められた。化学分析の結果,西黒沢期から女川期初期の頁岩は,亜鉛(〜500ppm),銅(〜150ppm),鉛(〜120ppm),バリウム(〜7000ppm)に富む傾向が見出される。一方,女川期から船川期ではこれらの元素は比較的乏しい。アルミニウムやチタンとの相関の検討を考慮に入れると,これらの元素は砕屑粒子源ではなくむしろ水源または生物源と考えられる。一方,鉄,コバルト,クロム,ニッケル,バナジウム,トリウムはアルミニウムやチタンとの相関がよく砕屑粒子起源であろう。マンガンは,通常の頁岩では一般に乏しいものの,女川〜船川期の炭酸塩レンズ,ノジュールでは比較的濃集する。顕微鏡観察の結果,閃亜鉛鉱,黄銅鉱は有孔虫殻を充填して見出される。顕著な熱水変質は認められないことから,続成過程下の生物地球化学的プロセスを経て間隙水より沈殿したことが推察される。硫黄同位体比分析の結果,西黒期はδ^<34>S=-30〜-40‰,女川期は+5〜-10‰,船川期は0〜-30‰で,西黒沢期から女川期にわたって顕著な正のシフトが認められ,女川期〜船川期は澱んだ還元的環境が示唆される。西黒沢期から女川期初期の頁岩中には,黄鉄鉱ノジュールが認められる。微化石,重晶石や亜鉛,銅,砒素などの硫化鉱物を伴うものも見出される。ノジュールの硫黄同位体比は,成長につれ顕著に重くなる傾向が見出される。 頁岩における亜鉛,銅,鉛,バリウムといった重金属の濃集や黄鉄鉱ノジュールが,西黒沢期から女川期初期にかけて顕著に見出されることは,この時期における北部太平洋地域での深層水の変化に関連した海洋環境の変化に起因するものと考えられる。黒鉱鉱床や石油鉱床の生成,保存も含め,成因,生成環境のモデルを構築し議論した。
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