研究概要 |
本研究では最も重要な鉱物の一つである石英とその同形物質の相転移前後における構造変化を詳しく調べ、転移時の格子不安定化の機構、物性の揺らぎ等について明らかにすることを目的として行っている.平成7年度ではラマン散乱高温実験のためのセルの製作とAlPO_4,GaPO_4の高温X線回折実験を主として行ったが,主として,高温X線回折実験において著しい進歩があった.GaPO_4は石英やAlPO_4とは異なる温度依存を示す事が明らかになった.AlPO_4の構造の温度依存は石英と殆ど全く同じであり,その高温型は無秩序型ではなく,α-β転移はソフトモードの凍結による,一次の変位型相転移であるとする説を強く支持するものであった.既に論文として国際誌(Phy. and Chem. of Minerals)に投稿し,受理された.これは数十年もの間論争となっている,石英のα-β転移の研究に対して,重要な貢献をなすものであり,回折法による詳細な構造データの温度依存の測定が,この種の相転移の研究にとって有効であると言う事を示す事が出来た.α-β転移の狭い温度幅で生ずる不整合相の詳細については,精密構造解析が行われなければならないが,未だ何人によっても成功していないが,本研究でも困難を感じている.本研究のような計数管を使う実験では,時間がかかり温度制御等の困難を克服できない.新規のプロジェクトにより,イメージングプレート等の広域かつ短時間観測の可能な研究や,分子動力学法等による結晶構造のシミュレーション等の計算機実験が望まれる.ラマン散乱高温装置の試作は,各種の設計図を製作して検討したが,到達温度と希望温度にまだ差が大きく,製作実施に至っていない.
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