科研費交付期間中、主として以下の研究を行なった(詳細は研究成果報告書を参照)。 (1)固体微粒子集合体と光との相互作用:計算機シミュレーションで生成した内部構造の異なる微粒子集合体に対して、Discrete Dipole Approximation法を用いて、微粒子集合体の内部構造・化学組成がその光散乱特性にどの様に反映されるかを調べた。前方散乱光の振舞いは微粒子集合体の全体的な大きさと平均の化学組成で決定され、後方散乱光の振舞いは集合体表層部の粗さの程度と関連している事が明らかにされた。 (2)原始太陽系星雲中での固体微粒子集合体の形成過程:固体微粒子集合体の形成過程を形成される集合体の構造とself-consistentに取り扱う手法に関して議論するに留まってしまった。 (3)彗星塵の性質とsilicateの結晶化:Greenbergの星間塵モデルを基礎に凝集の効果も考慮して、観測スペクトルとの比較から彗星塵のsilicateの10〜20%が結晶化している事を明らかにした。また、高温変性作用を被っていないと考えられている彗星中でのsilicateの結晶化の機構を星間塵の進化の枠組の中で提案した。10〜20%程度のsilicateの結晶化は星間塵のマントル中に蓄えられたradiacalの再結合時に解放される熱で達成され得る事を示した。 (4)星間塵の形成:原始太陽系星雲中に存在する始源的固体物質である星間塵の形成過程や存在形態を明らかにするために、星間塵の形成場所である諸天体での固体微粒子の形成を考察した。炭素星の周りでは、11.3μm featureの現れ方と関連してSiCを核としcarbonのマントルで覆われた固体微粒子が、酸素過多AGB星では、最近その存在が確認された13μm featureの現れ方と関連して、Al_2O_3を核としsilicateのマントルで覆われた固体微粒子が形成され得る事を示した。また、Ia型超新星爆発時に放出されたガス中での固体微粒子形成の可能性を検討した。
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