研究概要 |
本研究では,以下の3つの現象の解析に取り組んでいる. (1)変成鉱物の組成ゾーニング (2)変成作時のOstwald ripeningによる黄鉄鉱の粒径変化 (3)鉱物の反応縁の幅 このうち(1)については,変成岩中のザクロ石の仮想的な部分平衡における基本的な解析に既に済み,実際の相平衡に基づくよりリアルなモデル化を検討中である.(2)の現象については,三婆川帯のキ-スラーガー産黄鉄鉱の検討が行なわれ,変成度に応じて黄鉄鉱の粒径(CSDパターン)が変化することが確認されている.しかしながら,この粗粒化はOstwald ripeningによるものではなく,grain boundary growthによるものと思われ,現在解析を続けている.また,研究代表者・星野により調査・採集された接触変成を受けたチャートと研究分担者・早坂により調査・採集された非変成チャートの粒径解析も進んでいる.(3)の現象については,これを示す試料を入手し記載学的検討を開始した. 上述のように,研究はほぼ当初の計画通り推移しており,各現象の記載学的検討と予察的なモデルシミュレーションは,(1)と(2)についてはほぼ終了した.しかしながら,(1)の変成ザクロ石において,retrogradeなゾーニングのメカニズムが,未だ変成岩研究者の間でも結論を得ていないという問題があり,これに対する検討が当面の課題となっている.申請者らは,そのメカニズムをイオン交換反応とするのが最も妥当であるとの感触を得ているが,より詳細な熱力学的検討を行なわなければならないであろう. また,研究代表者・星野は,上記研究と並行して,これらの解析にも用いる理論的スキームの問題点について,今年度鉱物学会及び資源地質学会で講演し、その一部を鉱物学雑誌で公表した.
|