研究概要 |
本年度は主に熱水変質作用を受けて生成したと考えられる粘土鉱物を検討した.試料は佐賀県有田町に産する泉山陶石と熊本県天草下島に産する天草陶石で,雲母粘土鉱物およびその共存鉱物のHRTEM(高分解能透過電子顕微鏡)およびAFM(原子間力顕微鏡)観察を中心に行っている.その研究経過の一部は平成7年度の鉱物学会,粘土学会,三鉱学会で報告した.HRTEM観察から従来の研究手法(bulkおよび水簸法による粘土粒子のX線回折法など)ではわからない粘土鉱物の岩石中の存在状態が明らかになった.たとえば,bulk的には異なったポリタイプ(1M, 2M)の雲母からなると判断される泉山陶石試料の観察結果は,1Mが石英中の包含物として産出し,2Mが岩石中の空隙に不完全な球晶として存在することを明らかにした.また従来,僅かに膨潤層を含むセリサイト及びトスダイトからなると記載されていた天草陶石は膨潤層を含むセリサイトと膨潤層を含まないセリサイトから成り,トスダイトは膨潤層を含むセリサイトと密接に共存することが明らかになった.AFMを用いて雲母粘土鉱物の結晶表面観察の基礎検討を行った.DI社のAFMではコンタクトモード,ノンコンタクトモード,タッピングモードがあるが,雲母粘土鉱物の観察ではタッピングモードを用いるのが一番安定して表面形態観察をおこなうことができた.また,九州大学超高圧電子顕微鏡室に設置されたイメージングプレートのシステムを用いたHRTEM像の定量的評価を行うための基礎実験を行い,電子顕微鏡観察に通常使用されているフィルムに比べて約1/50〜1/10程度の電子線量で観察できることが明らかになった.
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