研究概要 |
超臨界熱水溶液中における二価金属イオンの溶存状態に関する情報を得るために、互いにほとんど固溶しないCaWO_4とMeWO_4(Me:二価金属)の2相とCaCl_2-MeCl_2水溶液間におけるイオン交換平衡に及ぼすNaClの影響に関する実験を主として600℃、1kbにおいて行った。今回実験の対象とした二価金属はMg、Sr、Ni、Co、Fe、Mnの6元素である。前2者はII族のアルカリ土類金属であり、後4者は第一遷移金属である。実験には、テスト型高圧反応容器を用いた。また、固相と液相の反応期間は5日から7日とした。固相の分析にはX線マイクロアナライザーと粉末X線回折装置を用いた。また、液相中の陽イオン分析には原子吸光分析装置を用いた。実験の結果,CaWO_4とMeWO_4の2相と共存する塩化物水溶液のCa/(Ca+Me)比はMgとSrに対してはNaCl濃度を変化させても一定であった。それに対し、Ni、Co、Fe、MnにおいてはNaCl濃度の上昇に伴い急激に減少した。これらの実験結果は、イオン結合性の強いMgやSrは、MeCl_3^-_<aq>以上の高次クロロ錯体を生成しないが、配位結合性の強いNi、Co、Fe、Mnは、NaClから解離したCl^-と配位結合し、MeCl_3^-_<aq>以上の錯体を生成していることを示している。NaCl_<aq>とCaCl_<2aq>に対する既存の熱力学的データを用いて実験結果を解析した結果、生成される金属クロロ錯体がMeCl_3^-_<aq>であると仮定した場合,その生成定数は、Sr=Mg=Ca≪Ni<Fe<Co<Mnの順に大きくなるという結果が得られた。。この得られた順序は、配位子場理論に基づくと上記遷移金属は、塩化物水溶液中で4面体配位を呈し、かつ、遷移金属は低スピン状態であることを示している。この結果はより低温での実験結果から予想されていた傾向と一致している。
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