火山成塊状硫化部鉱床のテクトニックセティングを明らかにするため、1)関東山地及び天竜川地域の三波川帯、2)南部フォッサマグナ、3)コロンビア共和国エルロブレ鉱床地域の火山岩類、あるいは火山岩類を源岩とする変成岩の地球化学的研究を行った。 関東山地及び天竜川地域の三波川帯 御荷鉾帯を含む三波川帯塩基性片岩の源岩はソレアイト系列、カルクアルカリ系列及びアルカリ玄武岩系列の岩石を含む。いずれも背弧海盆において生成したものであり、P-MORB型背弧玄武岩、N-MORB型背弧玄武岩、T-MORB型背弧玄武岩及び島弧型玄武岩の4タイプに分類できる。三波川帯中に胚胎する別子型塊状硫化物鉱床は背弧海盆におけるこれらマグマ活動に伴う熱水作用により形成されたと考えられ、N-MORB型玄武岩に密接に伴って産する。 南部フォッサマグナ 南部フォッサマグナはかってグリーンタフ帯と見なされていたが、近年太平洋プレートがフィリッピンプレートに沈み込むことにより形成された古伊豆弧が本州弧に衝突したものであるというコンセンサスが成立している。本研究では丹沢山地、巨摩山地、御坂山地の火山岩類の地球化学的研究を行い、これらの岩石が主弧及び背弧で生成され、ソレアイト系列とカルクアルカリ系列の岩石を含むことを明らかにした。御坂山地の宝塊状硫化物鉱床は主弧で形成された安山岩質岩石に密接に伴って産する。 エルロブレ鉱床地域 北部アンデス造山帯西部山脈を構成する白亜紀付加帯中の緑色岩類及びこれと同成的なエル・ロブレ火山成塊状硫化物鉱床は、海洋性前弧-島弧-背弧系(Supra-subduction zone)において形成された。白亜紀におけるコロンビア背弧発達-閉鎖の過程で、背弧拡大軸が島弧に接近し、拡大軸下のマントルダイアピル中に島弧成分が混入するステージでエル・ロブレ鉱床が生成したと考えられる。
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