本研究では、白金族元素を分析対象元素として取り上げ、金属質物質の形成過程・化学的進化過程を明らかにすることを目標とする。本年度は、超微量元素分析装置(ICP質量分析計、東京工業大学現有装置)を用い、鉄隕石試料中の白金族元素の存在度(1グラム中に百万分の数g程度含まれている)を検出する試みをおこなった。その結果、現行のICP質量分析計では、隕石試料中の白金族元素の定量に際しては十分な感度が得られず、元素検出感度の向上が必要であることが明らかとなった。そこで本研究では、イメージ炉を用いた瞬間蒸発試料導入法を開発し、プラズマイオン源に対する白金族試料の導入効率を高めるとともに、アルゴンプラズマガスに微量の窒素を混合することにより元素のイオン化効率を高めることに成功した。これにより、白金族元素の検出感度は、10〜20倍程度改善され、鉄隕石中の全白金族元素を検出することができた。平成8年度には、高感度化したICP質量分析計を用いて、白金族元素の定量・鉱物間での分配の様子をしらべることにより、隕石の熱的進化過程を解明したい。
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