1)植物から放出されるイソプレンとモノテルペン類(α-ピネン等)及びイソプレンの気相反応生成物であるメチルビニルケトン(MVK)とメタクロレン(MAC)を同時に高感度で分析するため、マイクロトラップ(カーボパックBとCを充填)による常温濃縮とキャピラリーGC/MS(SIM)を組み合わせた連続分析システムを確立した。カラムにはHP-5(内径0.32mm、長さ50m)を用いて、-50℃からの昇温分析を行った。400mlのサンプル量で検出限界は<10pptであった。また、本システムによりこれまで発生源の特定されていない中級アルデヒド類の分析も同時に可能となった。 2)上記システムを用いて1995年7月17〜19日、8月15〜17日につくば地域^*の松林内で1時間毎の連続観測を実施した。イソプレン濃度は日中高濃度となり、8月16日に達した。α-ピネンはオゾン濃度が低くなる夜間に高濃度となり、最高の6ppbは8月16日早朝に観測された。反応生成物であるMVKとMACは日射とよく似た日変動を示し、また、8月16日日中のMVK/MAC比はOHラジカル反応が支配的である場合に予想される2.5に近づいた。イソプレンやMVK、MACのOH反応ではオゾンも生成されることからその影響は無視できないと考えられる。また、ノナナ-ル等の中級アルデヒド類は極めてオゾンと類似した変動パターンを示し、オレイン酸のような不飽和化合物のオゾン反応による二次生成あるいはオゾンストレスによる植物からの一次放出が考えられた。それぞれの最高濃度は3.4、3.1ppbであって、いずれも光化学反応性は高いため、大気化学に重要なインパクトを与えている可能性は高い。 (^*台風被害のため、長野県小谷村における観測が不可能となった。)
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