研究概要 |
シングル分光器を使用して位相-変調ラマン分光システムを組み立てた.また,分光器の制御・スペクトル測定・データ処理を,パーソナルコンピューターでおこなうためのプログラムを作成した.主な機能は,コンピューターからの信号で分光計を調査する,ロックインアンプからの出力をAD変換してコンピューターに取り込む,波数校正,ピーク波数の読みとり,差スペクトルの計算,フロッピ-ディスクへのデータ格納,プロッターへの出力などである.ポリアセチレンとポリリエニレンビニレンの光誘導ラマンスペクトルの測定を試みた.ポリアセチレンまたはポリチエニレンビニレンの薄膜をクライオスタットのヘッドにとりつけ,77Kに冷却して,アルゴンイオンレーザーの514.5nm光(ポリマーの電子吸収帯内に位置する波長)を照射した場合としない場合との差ラマンスペクトルを測定した.プローブ光の波長は,ポリアセチレンでは830nm(Arイオンレーザー励起Ti:サファイアレーザー),ポリチエニレンビニレンでは1064nm(Nd:YAGレーザー)である.その結果、光照射により起こるラマンスペクトルの変化を観測することに成功した.レーザー光照射による加熱効果の影響を調べるために,試料の温度を上げて,77Kでのラマンスペクトルとの差スペクトルを測定した.光照射によるラマンスペクトルの変化は加熱によるラマンスペクトルの変化と異なっており,観測された光誘起ラマンスペクトルは,光照射により生成した荷電励起種(荷電ソリトン,ポーラロンなど)によるものであると結論した.
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