1.ジアリールエテン類のフォトクロミック反応 (1)パラフルオロペンテンを骨格とするジアリールエテンはフォトクロミック反応効率が非常に高いが、溶液のピコ秒蛍光寿命を測定し、分子構造と蛍光寿命に対する溶媒の極性効果の関係を調べた。メトキシ基を持つものは溶媒の極性と光に蛍光寿命が長くなるが、シアノ基を持つものは溶媒の極性の影響を受けにくいことがわかった。(2)ジアリールエテン類をアラキン酸カドミウム塩に混合し、ジアリールエテン類を含むLB膜を作製した。可視吸収スペクトルの測定から、紫外光照射によりフォトクロミック反応がLB膜でも効率良く起こっていることを確認した。(3)ジアリールエテン類の基底状態の安定な構造、3種類存在するコンフォーマ-間のポテンシャル障壁の高さ、励起状態の構造と電荷分布等を半経験的分子軌道法により計算した。励起状態では、ジアリールエテンの種類により、双極子モーメントの構造依存性が大きいものと小さいものがあることを明らかにした。以上の成果は、平成7年度の光化学討論会に発表し、さらに日本化学会春季年会に発表する。 2.シアニン色素のフォトクロミック反応 シアニン色素の光異性体の寿命は、非極性溶媒中では対イオンの影響を受ける。シアニン色素の種類によっては対イオンの影響が大きいものと小さなものがある。また、光異性体の寿命だけでなく、可視吸収極大波長・蛍光極大波長にも影響することがわかった。対イオンの影響の機構は、分子軌道計算によりほぼ明らかにできた。以上の成果は、平成7年度の光化学討論会及び環太平洋国際化学会議に発表した。
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