研究概要 |
都立大の多価イオン源(TMU-ECRIS)において、多価(8価以上)原子イオンと分子を衝突させ、多電子捕獲反応を利用したクーロン爆発実験を進めた。今年度はCEI実験装置の心臓部である多次元検出システムの製作と性能評価を行い、さらに構造既知の分子のイメージングを行なった。クーロン爆発で生じたM/eが等しいフラグメントイオンの組みは非常に小さい時間差で(数10〜数100nsのオーダー)検出器に到達するため、これらを正しく識別して位置を決めるためには、高い時間分解能と位置分解能を持った多次元検出システムが必要である。本研究では荷電結合容量バックギャモン型位置検出器(NBWC)付きのMCPを使用してその時間特性について調べた。この検出器の位置分解能に関しては、現在までに試作器による性能評価から最高30μmが得られている。 ECRISから引き出したAr^<8〜10+>をノズルから吹き出したN_2またはArに衝突させ、電子移行反応によって生じたイオンを電場で引き出してMCP-MBWCで検出した。イオンがMCPに到達すると増幅された二次電子がPSDの対応する領域に流れ込む。この荷電(パルス電流)をx,y座標に比例して4分割し、その比から位置を求めた。時間分解能として重要な立ち上がり時間については、今回10ns以下の鋭いステップ状信号が得られた。パルス立ち上がり時にリンギングを生じるため、100ns程度の時間差で飛び込んだ二つのイオンの位置誤差が大きくなる問題はあるが、CEI実験に十分使用できることがわかった。また直線3原子分子のクーロン爆発実験を行なったところ、概ねその構造と矛盾の無いイメージが得られた。一部かなり歪んだ像が得られており、その原因について検討した。
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