高速掃引赤外半導体レーザー装置でS/N比を向上するために、積算プログラムの改良と真空ポンプからの振動を取り除くことを試みた。積算効果を高めるために、同時に測定している周波数標準に用いるスペクトルの吸収位置(頂点)を検出し、一回毎の頂点のずれを補正するようにして積算を行うプログラムを作成した。その結果、積算回数を増やすことによりS/N比が良くなることが確認できた。また、回転ポンプからの振動を取り除くために油拡散ポンプとの間にあるベローズから真空ゴムホ-スに交換してみたが、S/N比の向上には到らなかった。赤外半導体レーザーを購入して、N_2・・・COの2142cm^<-1>近辺のP枝吸収遷移の測定を試みた。N_2分子の合成核スピンI=0の状態のK=0←0バンドの1組を測定し、I=1状態のR枝遷移で測定されている2組のうちP枝遷移で1組を測定したが残り1組のスペクトルを見出すことは困難であった。この原因は、スペクトルが弱いためか、半導体レーザーの出力不足によるものか不明で今後検討が必要である。また、(CO)_2の測定を行い、2144cm^<-1>近辺に強い吸収線があるのが判明し、この近辺にバンドオリジンがあるものと考えられる。現在、スペクトルの帰属を行っている。通常の剛体コマ分子の赤外吸収スペクトルでは分子定数を合わせることができないので、相互作用を取り入れた解析が必要であることが分かった。
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