研究概要 |
既有のワークステーション(NEC EWS4800/320)とFORTRANコンパイラを用い、複雑な気相分子スペクトルの帰属と解析のため、図形処理ライブラリパッケージ等と、また作成した図を出力するためにポストスクリプト対応のプリンタを新規に購入し、これらの上に構築したソフトウェアを使用して、蟻酸分子の16-17μm領域におけるν_7、ν_8バンドのスペクトルをコリオン相互作用を考慮して解析した。 スペクトルは国立天文台野辺山のBruker IFS 120HRフーリエ変換赤外分光計により、光路長24m、試料圧数十mTorrで測定した。二酸化炭素を用いて波数校正し、560-730cm^<-1>の領域で約8000本の吸収線の波数を0.0001cm^<-1>より高い角度で決定した。得たスペクトルは以前の半導体レーザースペクトルと比べてやや分解能は落ちるが、間隔が0.003cm^<-1>の2本の線は完全に分離できており、この程度の密度のスペクトルであれば十分な分解能と言える。帰属は既報の定数から計算した遷移波数を中心にLoomis-Wood図を描くことによって行なった。これまでJ≦30,K_a≦15の範囲で3850本の遷移を帰属した。以前の解析では見出されていなかったν_7バンドのa型遷移も一部のK_aについて観測・帰属された。蟻酸分子はC_S[M]対称で、その振動回転準位は2つの対称種に別れる。この対称性から導出した有効振動回転ハミルトニアンに基づいたプログラムを用いて解析した。対角ブロックについて6次、非対角ブロックについて3次の回転演算子の項まで含めて誤差の範囲の近くまで実測値を再現できる定数が得られた。
|