固体と接する溶液や液晶の界面層および光ファイバーチップと固体表面の間に挟まれた領域をメゾスコピック反応場として捉え、この領域の化学反応や緩和現象を時間分析して計測すると共に微小領域の光反応制御の可能性を探る事を目的として、ピコ秒の時間分解能と数十ナノメートルの空間分解能を合わせ持つ、近視野型時間分解蛍光分光システムの開発を試みた。 1.ピコ秒エバネッセント光誘起蛍光分光システム シンクロナス励起モード同期サブピコ秒色素レーザーを励起用光源とする、20〜30psの応答関数を持つシングルフォトンタイミングシステムを組み立てた。サファイアおよび石英プリズムを基板に用いて、エバネッセント光を励起光源とするピコ秒エバネッセント光誘起蛍光分光が可能であることを認識した。また、水溶性高分子溶液を用い、近赤外エバネッセント光で界面層のみ可逆的に相転移を起こすことに成功し、界面反応場の光制御に途を拓いた。 2.近視野型時間分解蛍光分光システム 全反射型のエバネッセント光誘起蛍光分光法に面内方向の空間分解能を付与するため、先鋭化光ファイバーを用いる近視野型時間分解蛍光分光システムを作成した。倒立型顕微鏡に静電容量型エピゾ素子を取り付け、モード同期Nd:YLFレーザーと先鋭化光ファイバーをカップリングさせ、試料面をnm精度でスキャンするシステムを設計した。シングルフォトンタイミングを検出法に用いて、時間分解能30ps以下、空間分解能300nm程度のシステムとした。 3.メゾスコピック領域の光ダイナミクス 100〜300nmの大きさを持つ蛍光色素をドープした種々の高分子微粒子の蛍光減衰曲線を計測し、100nmの微粒子においても蛍光ダイマミクスに殆ど差が無いことがかわった。また、石英基板に色素が吸着した系においては、二次元的に不均一な分布が存在し、蛍光ダイナミクスも場所ごとに異なる事が判明した。 以上のように近視野型時間分解蛍光分光システムを制作することにより、メゾスコピック領域の光ダイマミクスをピコ秒の時間解能で解析できるようになった。今後、空間分解能を上げると共に、光反応制御の可能性を探る事が課題である。
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