(1)C_2H_2分子のA^1A_u状態からの前期解離過程を、水素原子アクションスペクトル法で研究し、量子状態依存性を検討した。その結果、従来報告されていた蛍光量子収率のJ依存性は、水素原子収率には反映されておらず、J依存性は前期解離ではなく電子緩和によるものであることがわかった。また、前期解離には新たにK依存性が発見された。すなわち、C_2H_2のCC軸回りの回転によって、解離が加速されることが判明した。また、水素原子のDoppler分光によって、解離における並進エネルギー放出を検討したところ、解離反応の出口付近に約500cm^<-1>のエネルギー障壁が存在することがわかった。このような事実から、C_2H_2分子の前期解離過程には、三重項状態への項間交差が重要な役割を果していることが明らかになった。(2)CO_2、N_2O、OCSなどの分子の光解離機構は非常に複雑である。これはRenner-Teller効果による電子状態の分裂のために、単一の光励起エネルギーに対して複数の電子遷移が起こったり、複数の励起状態間に非断熱遷移が起こるためである。我々は、解離生成する原子の空間分布を、レーザーイオン化画像観測法によって測定し、その偏向依存性の解析から、生成する酸素や硫黄原子の電子軌道配向を明らかにした。
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