研究概要 |
中性分子の解離ダイナミクスは、多原子分子に至るまでこれまで幅広い研究が行われてきた。近年、大気化学反応及び星間化学反応において、不対電子を持つフリーラジカルの光化学反応がそれらの反応過程の中で重要な役割をしていることが示唆されている。本研究では、C_nH_mラジカルの解離機構に注目し、共鳴多幸子イオン化画像観測法により、その解離ダイナミクスについて研究した。 塩化ビニル(C_2H_3Cl)を(π,π^*)状態に光励起するとビニルラジカル(C_2H_3)と塩素原子に解離生成する。この際生成するラジカルは、193nm〜210nmの波長領域で効率よく解離生成することが分かった。またビニルラジカルは、かなり振動励起した成分とそうでない成分の2種類あることが分かった。振動励起した成分の生成速度は角度分布の測定とRRKM計算により10^<11>〜10^<12>_<s-1>程度であることが見積もられた。 ジクロロエチレン類の紫外光分解では、C_2H_2Clラジカルの自発解離に伴うC_2H_2ラジカルの生成が確認された。このC_2H_2Clラジカルの自発解離には波長依存性が見られ、短波長励起(193-210nm)では、生成したC_2H_2Clラジカルはかなり内部エネルギー(振動励起)をもつため、かなりの割合で二次解離を起こす。193mm励起については、ほぼ100%二次解離を引き起こす事が分かった。長波長励起(225-235nm)でも収率こそ少ないが、C_2H_2Clラジカルの二次解離が確認された。
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